神のベルーフに生きる〜ルターとバッハ〜

1685年にドイツで生まれ、西洋音楽の基礎を築いた大作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハ。
そこから遡ることおよそ200年、同じドイツで教会に新しい時代を開いた宗教改革者マルチン・ルター。
時代を超えて二人を結ぶ線。それは、神のベルーフ、召命です。

そこに眼差しを向けるのは、バッハ音楽の世界的演奏家として活躍される鈴木雅明氏と日本のルター派教会の神学の第一人者である江藤直純氏。
職業という言葉にもなった、この「神の召し、招き」という意味のベルーフをキーワードに、バッハの音楽を通して、主の十字架と復活の信仰に生きたキリスト者の生き方を見つめます。

ご出演:
鈴木雅明氏(「バッハ・コレギウム・ジャパン」音楽監督、指揮者、オルガニスト)
江藤直純氏(日本福音ルーテル教会牧師、ルーテル学院大学学長)
聞き手 長倉崇宣


[Index] 1.番組を聴く | 2.人物紹介3.用語解説4.番組内で使用している楽曲


.
.

前編 「十字架の神学・十字架の音型」


聴取期限1/5
(約35分)

◇◇◇

後編 「私たちの内からではなく「外」から」


聴取期限1/5
(約35分)

.
.


.
.

マルティン・ルター(1483〜1546)

ドイツのザクセン地方の小村に生まれ、教育熱心な父親の影響下で法律家を目指して勉学に励むものの、落雷死の恐怖の中で修道士へと道を転じ、聖アウグスチノ修道会に入会。その修道生活は厳格を極めたが、特に「神の義」に深い挫折を経験する。その中で、特に「ローマの信徒への手紙」の研究から、後に「信仰義認」としてまとめられる理解を得る。

その後の1517年、当時のドイツ国内で販売されていた贖宥状への疑義を『95箇条の提題』として提出したことが問題とされ、これがきっかけとなり、いわゆる「宗教改革」へとつながった。

宗教改革の運動に取り組む中、それまでラテン語のみであった聖書をドイツ語に翻訳し、信徒が聖書に親しむことに道を開く多大な貢献をした一方で、ドイツ農民戦争の際の言動は、領主達に農民虐殺の口実を与えることにつながった。

また、自ら讃美歌(コラール)を作曲し、礼拝で会衆にも讃美歌を歌うことを奨励するなど、後のバロック音楽の発展に大きく影響を与えた。


ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)

ルター派の音楽家であるバッハ家に生まれ、1703年にヴァイマールの宮廷楽団に入ったことを皮切りに、演奏家としてのキャリアを積む。その当初から周囲から高く能力を評価される一方で、その前衛的な手法などについては聖職会議から叱責を受けることもあった。

1708年、ザクセン=ヴァイマール公国の宮廷オルガニストとなり、多くのオルガン曲を作曲。1717年、アンハルト=ケーテン候国の宮廷楽長に就任し、数多くの世俗音楽を作曲。1723年、ライプツィヒのトーマス教会のカントル(教会聖歌隊や礼拝音楽を取り仕切る要職)に就任。

生前には必ずしも広い名声を得ていたわけではなかったが、今日では西洋音楽の基礎を確立した「音楽の父」とも称される。


.
.

ベルーフ

現在では「職業」と訳されるドイツ語。ルターが聖書をドイツ語に翻訳した際に、それまで「聖職者への召命」を意味していたこの言葉を、世俗の職業を含めて広く用いた。従来、ヨーロッパの言語で「職業」にあたる言葉には「使命としての職業」の含意は無かったが、ルターによるこの翻訳をきっかけとして、聖職に限らず全ての職業が神からの召命であるという理解が一般化することにつながった。

コラール

もともとは、ルーテル教会にて全会衆によって歌われるための讃美歌の意。そこから転じて、現代では類似した性格の作品についてもコラールと呼ばれることがある。
ルターによる宗教改革は礼拝改革にもつながり、それまで一部の人しか歌うことが無かった礼拝中の讃美歌を全会衆が歌うべきであるとし、そのためにドイツ語による讃美歌(=コラール)をルター自身が多く作った。代表的なものとしては『神はわがやぐら』がある。

カンタータ

一般的には、器楽伴奏付きの声楽作品のこと。バッハが活躍した18世紀前半のドイツでは、コラールを取り入れた「教会カンタータ」が数多く作曲された。19世紀以降は、カンタータは合唱と管弦楽のための多様な作品のことを表すようになった。
中でも教会カンタータとは、神の言葉を広く伝えるため、教会での礼拝のために書かれた作品のこと。聖書朗読と説教と深く結び付けられて作られており、「聖書の言葉を牧師が説明し、聖書の物語を音楽で再現する」とも表現される。

受難曲

新約聖書の4福音書に記されているイエス・キリストの受難を描いた音楽作品のこと。
受難曲は教会の聖週間(受難週)における典礼と密接に結びついており、中世以来、この期間には教会で受難物語の朗読がなされる伝統があった。そこから発展し、17・18世紀にルーテル教会の影響圏で、合唱や管弦楽を伴った受難曲が多数作曲された。現代においても、典礼用・演奏会用の受難曲が新しい視点で作曲されている。


.
.

『われらが神こそ、堅き砦 BWV80』
(バッハ作曲・カンタータ第80番、ルターの讃美歌をもとにした合唱曲)
指揮・鈴木雅明 演奏・バッハ・コレギウム・ジャパン
CD「クリスマスから宗教改革記念日まで – バッハのカンタータで教会暦をたどる」より

 


『おお、血と傷にまみれし主のみかしら』
(バッハ作曲・「マタイ受難曲」より、受難のコラール)
指揮・鈴木雅明 演奏・バッハ・コレギウム・ジャパン
CD「マタイ受難曲 BWV244」より

 


『キリストは死の縄目につながれたり BWV4』
(バッハ作曲・第4番、最初の合唱曲)
指揮・鈴木雅明 演奏・バッハ・コレギウム・ジャパン
CD「クリスマスから宗教改革記念日まで – バッハのカンタータで教会暦をたどる」より