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塩谷達也の「Spirit of Gospel」
There is a balm in Gilead
to make the wounded whole,
there is a balm in Gilead
to heal the sin-sick soul.
#13
今日ご紹介するのは疑問文を肯定文に変える歌です。
旧約聖書エレミヤ書8章に、預言者エレミヤがイスラエル人の艱難を預言し、
「ギルアデには人を癒す妙薬はないのか?」と問いかける場面があります。
黒人奴隷たちは日々の苦しみをこのイスラエル人の苦しみに重ねる。
ところが彼らはエレミアの問う疑問文を、肯定文に変えてしまったんです。
ギルアデには乳香がある!傷ついた私たちを、
この罪でいっぱいの私たちの魂を癒す妙薬がある!
鞭打たれ、生きる意味を考える毎日の中で、彼らは歌った。
Jesus is balm in Gilead.
彼らのこのシンプルな信仰の歌「Balm in Gilead」。
すごくメロディもきれいな曲です。
今日はこれを日本語に訳した賛美歌「ギルアデの乳香」聴いていただきたいと思います。
放送は第15回・2014年の番組の再放送です。
Oh Lord, I just come from the fountain.
I’m just from the fountain, Lord.
Just come from the fountain.
His name so sweet.
Poor sinner, do you love Jesus?
Yes, yes, I do love my Jesus.
Sinner, do you love Jesus?
His name so sweet.
#12
前回もご紹介した「His Name So Sweet」という黒人霊歌では、
「I just come from the fountain.」という歌詞が繰り返されます。
fountain―泉っていいですよね。
ゴスペルの中で尽きることのない、溢れてくるものを表現する、この「Fountain」。
彼らの中ですごい助けというか・・・嬉しかったんじゃないかなって思います。
それに続く歌詞はこうです。
Poor sinner, do you love Jesus?
Yes, yes, I do love my Jesus.
これはコール・アンド・レスポンスというスタイルで、
リーダーが「Poor sinner, do you love Jesus?」って歌うと、
他の奴隷たちが「Yes, yes, I do love my Jesus.」って応え合う。
ずっと今も踏襲されてきている、黒人の信仰の特徴だと思うんです。
「お前はイエスを愛しているか?」と、彼らは身振り手振り、
また踊りやスキットで、本当に表現力豊かに歌うんです。
信仰から逸れていかないように、また逸れていっている人を戻すように。
放送は第14回・2014年の番組の再放送です。
#11
今日ご紹介する黒人霊歌「His name so sweet」。
僕は最初この「sweet」っていう単語のニュアンスがわかんなかったんですね。
でもイエス様と出会って、リアルに「 His name so sweet」を実感しているところなんです。
新約聖書ヨハネ福音書4章に出てくるサマリアの女は、
ユダヤ人の間で迫害されていて、公的な場所にも出ていけず、
暑い砂漠の昼に水を汲みに出て行った。そこでイエスが彼女に語りかけ、
二人のやり取りが続くんですね。
そこでイエスは言うんです。
「私が与える水はその人のうちで泉(fountain)となり、永遠の命への水が湧き出ます。」
黒人奴隷にとっては、もう僕には語り尽くせないぐらい、
このサマリアの女の心と自分の境遇がピタッと重ね合わせられたんじゃないかなと思う。
そういう苦しいところを通ったからこそ「His name so sweet」
この「sweet」の意味が本当にわかるんじゃないかなと思うんですね。
放送は第13回・2014年の番組の再放送です。
暗い夜が来て何も見えない
かすかに聞こえる hold on
涙も枯れて途方に暮れた
言葉にならない hold on
hold on
hold on
Keep your hand on the plow hold on
苦しみの向こう祝福があるって
信じ続けよう hold on
右も左も閉ざされたなら
天を見上げよう Just hold on
hold on
hold on
Keep your hand on the plow hold on
#10
白人たちから鞭打たれながら、畑を耕していかなきゃいけない。
これが黒人奴隷たちの日常生活だったと思います。
私たちの日常にも、本当に辛いいろんなことに打たれている時があると思います。
先週も聞いていただいた「Hold on」という歌、
私が日本語の歌詞を黒人霊歌に付け加えているんですけど、
この歌詞は、あの東日本大震災の後に生まれてきたんです。
暗い夜が来て何にも見えない。
かすかに聞こえるHold on。
涙も枯れて途方に暮れた。
言葉にならないHold on。
苦しみの向こう祝福があるって。
信じ続けようHold on。
右も左も閉ざされたなら
天を見上げようJust hold on。
奴隷制度という強制的に置かれた環境、この究極の弱さの中から生まれてきた歌、ゴスベル。
これが私たちにどうあるべきかを見せてくれてるんじゃないかなというふうに思います。
放送は第12回・2014年の番組の再放送です。
Deep river, my home is over Jordan,
Deep river, Lord, I want to cross over into campground.
Oh, don’t you want to go to that gospel feast
That promised land where all is peace?
#9
奴隷制度はゴスペルを語るときに絶対に外せない、一番源の部分です。前回お話した映画「それでも夜は明ける」でも、本当にその生々しい厳しさ、辛さが描かれていましたけど、このゴスペルの出発は奴隷制度なんですね。
この試練、困難、厳しさ、ここを体験する、ここを実際に生き抜いていくというところからしか、ゴスペルは生まれてこなかったと思っています。
そしてまた彼らにとって、励まし、慰めや希望を確信させるゴスペルがあったから生き抜いてこれて、そしてまた歌が生まれてきたと思うんですね。
放送は第11回・2014年の番組の再放送です。
#8
「12 years a slave」(邦題「それでも夜は明ける」)という実話を元にした映画があります。主人公はアメリカ北部に生まれ育った、奴隷ではない自由黒人。ところが拉致されて南部に連れていかれ、奴隷として働かされる。そして12年経って、自分が自由黒人だと証明でき、家族の許に帰るという壮絶な話なんです。
その映画にも出てくるんですけど、当時クリスチャンが奴隷制を支持してました。聖書の言葉を使って奴隷制を正当化する、そういう現実がありました。
今の僕らが彼らを批判するのはすごくイージーなことだと思います。でもその映画を見て僕は、自分の内側にある弱さと罪をすごく感じました。たとえ今、奴隷制がなくても、人を支配したり、この方が楽だ、効率的だ、そのために人を犠牲にする。そういう同じ罪の種、本当に僕らの中に大きくあるなと…。
そういう人間の罪の中で、この主人公は、家族と会いたい―これは愛の力だと思いますけれども、希望を持ちます。この愛の力しか、罪を克服することはできないんじゃないか…。イエス様はその愛の動機によって来てくださったんだ、そう思ったんです。
放送は第10回・2014年の番組の再放送です。
Wade in the water
Wade in the water
Wade in the water, children
Wade in the water
God’s gonna trouble the water
See that host all dressed in white,
God’s a gonna trouble the water.
The leader looks like the Israelite,
God’s a gonna trouble the water.
#7
今日は「地下鉄道(underground rail road)」のことをお話したいと思います。これは黒人奴隷たちのアメリカ北部州やカナダへの逃亡を援助する秘密組織でした。この活動の中でも黒人霊歌は大きな役割を果たしたと言われています。
奴隷の苦しみ、それは僕らはもう想像するしかない、また想像しがたい…。その日常の苦難の中で、彼らが歌い、何を思って、そして神に希望を見出していったか。口で言うのは簡単なんですけども、この生活から逃れたい、解放されたい、すごくこう何とも言えないリアルな苦しみの中で生きていた彼らの複雑な思いというのがあったと思うんですね。
そういう中でこの「地下鉄道」は、食べ物や着る物を援助したり、北へ行く道を教えたり、さらには馬車やボートに乗せて次の場所まで護送もしたと言われています。まさに命がけで。
彼らは、奴隷主たちが追跡のために放った犬から逃亡奴隷たちを逃れさせるために川を渡らせた。その歩いて川の中に入っていくことを歌った「Wade in the Water」という歌を今日は聞いていただきます。
2014年の番組の再放送です。
Steal Away
Steal Away
Steal Away to Jesus
Steal Away
Steal Away home
I ain’t got long to stay here
#6
黒人奴隷たちは魂の解放と自由の希望を歌に託しました。そして実際の自由を得るために、歌は彼らの大切な武器になったと言われています。
例えば「Steal Away」という曲。これを誰かがハミングで歌い始めると、それを聞いた人がまた歌う、そうして遠く離れた畑までバトンを渡すように歌い継いでいく。これは、奴隷主に気づかれないように、夜中にハッシュハーバーで集まるぞと知らせるサインだったと伝えられています。
奴隷たちの中には北部に逃亡した人もいました。奴隷主たちは逃亡奴隷を追うのに犬を使うんですけど、犬は鼻が一回水に入ると効かなくなるんですね。だから奴隷たちは川に入った。まるで紅海を渡るイスラエルの民のように。その時に「Go Down Moses」という黒人霊歌を歌って、今晩川を渡って逃げるぞと、逃亡をヘルプしてくれる人たちに伝えたとも言われています。
僕は黒人霊歌がこういう現実の自由への歌だったと知って、だからこそ今、僕ら日本人にも、その強さ、濃さ、希求力が伝わるんじゃないかって思ったんです。
2014年の番組の再放送です。
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
A long, long way from my home
A long, long way from my home
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
We are up in the heavenly,
heavenly land
We are up in the heavenly of land,
true believer, a long way from home,
a long way from my home.
#5
今回からしばらくゴスペルの歴史に触れながら掘り下げていきたいと思います。
黒人霊歌は1730年代にそのルーツを持ち、18世紀半ばから後半にかけて歌われた黒人奴隷たちの歌と言われています。
彼らは1日の苦役を終えた後、仲間と秘密の場所で集まり、祈り、歌い、踊った。それは写真にも残っていないし、今となっては正確には把握できないのですが、「ハッシュハーバー」と呼ばれる奴隷たちの場所です。
見つかってはいけない、隠された教会。奴隷主に発見されれば刑罰が加えられる。それでも彼らは集まりました。
苦難の中で、隠された場所で、長い時間かけて、黒人霊歌は形作られていったんですね。
歌い、祈り、神に助けを求めて叫び、踊った。時には一晩中。
2014年の番組の再放送です。
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
A long, long way from my home
A long, long way from my home
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
We are up in the heavenly,
heavenly land
We are up in the heavenly of land,
true believer, a long way from home,
a long way from my home.
#5
今回からしばらくゴスペルの歴史に触れながら掘り下げていきたいと思います。
黒人霊歌は1730年代にそのルーツを持ち、18世紀半ばから後半にかけて歌われた黒人奴隷たちの歌と言われています。
彼らは1日の苦役を終えた後、仲間と秘密の場所で集まり、祈り、歌い、踊った。それは写真にも残っていないし、今となっては正確には把握できないのですが、「ハッシュハーバー」と呼ばれる奴隷たちの場所です。
見つかってはいけない、隠された教会。奴隷主に発見されれば刑罰が加えられる。それでも彼らは集まりました。
苦難の中で、隠された場所で、長い時間かけて、黒人霊歌は形作られていったんですね。
歌い、祈り、神に助けを求めて叫び、踊った。時には一晩中。
2014年の番組の再放送です。
Oh, Plenty Good Room
Plenty Good Room
Good room in my father’s kingdom
Plenty Good Room
Plenty Good Room
Why don’t you choose your seat and sit down?
I would not be a sinner
I’d tell you the reason why
Cause if my lord should call on me
I wouldn’t be ready to die
#4
これは名もない黒人奴隷が作ったゴスペルで、曲調はブルースと何ら変わらないんですね。
どうしようもないブルーな感情の爆発、その自分に焦点が当たっている歌がブルース。そしてゴスペルも感情の叫びがあります。じゃあ何が違うのか。
ゴスペルのゴスペルたる所以は、その感情の叫び自体じゃないんですね。そこに留まるんじゃなくて、天を仰ぐ。その目線にこそゴスペルのエッセンスが隠されていると思うんです。
ブルースは、「俺もそうだ」「私も辛い」、その共感による横のつながりの歌だと思うんですね。
ゴスペルは、その自分というものはもう手放しちゃう。そして神に、心も体も全部委ねて歌う。自分が無くなるんじゃなくて、神様に引き上げられていくような…。
僕はイエス様に出会って、僕の歌が本当にゴスペルになった時に初めて、ブルースとゴスペルの違いが分かったような気がします。それは知識じゃないし、どっちが好きかということでもなくて、本当に体験したんだと思います。
2014年の番組の再放送です。
#3
僕は高校生の頃にブルースを聞いて、おじいちゃんがうなりながら歌ってたんですけど、当時ハードロックでギターを歪ませて叫んでた僕よりも、遥かに感情の爆発を感じたんですよね。
お金がないとか女房に逃げられたとか仕事がないとか、リアルな日常を歌うブルース。その節回しの全てに、どうして人生は、俺はこうなんだっていう叫びを感じて、共感しました。自分のことを自虐的に歌うことで少し楽になるような…。
ブルースっていうのは自分に語りかけていると思うんです。生きる苦しさ、それは歌っても歌ってもなくなりはしない。だからまた歌うんだと思います。
僕は先にこのブルースと出会って、そこからゴスペルに出会っていきます。次回はそのゴスペルとブルースとの違いをお話したいと思います。
2014年の番組の再放送です。
Nobody knows the trouble I’ve seen.
Nobody knows the trouble I’ve seen, Nobody knows but Jesus
Glory hallelujah!
Sometimes I’m up, sometimes I’m down
Oh, yes, my Lord
Sometimes I’m almost to the ground
Oh, yes, my Lord
#2
この歌が黒人奴隷の深い悲しみを表しているスピリチュアルだということを前回お伝えしました。本当にこの曲は哀感に満ちた曲なんですね。
でもこの悲しみ、決してゴールではないんですね。そこに、究極のジャンプがある。この歌の中に悲しみだけじゃなくて、慰めと勝利がある。この歌は特にそれが生々しく、ビビットに描かれているなと思います。
Nobody knows But Jesus
大学生の時、僕は聖書もキリストも知らずに、初めてこの歌を歌った。その時、心に電流が走ったような感じがした。この「But Jesus」に不思議と心を掴まれた。きっと僕も、自分でも気づかずに大きな孤独と悲しみを胸に秘めて、この歌に出会ったんだと思います。
2014年の番組の再放送です。
#1
ゴスペルは日本で不思議な形で広まっています。
ゴスペルを歌う中で、黒人たちの魂の叫びに、心の深いところが震える。
そういう方がたくさんいるんですね。僕自身もそれを体験してきました。
僕が初めて出会った黒人霊歌「Nobody knows the trouble I’ve seen.(誰も知らない、私の悩みを。)」は、黒人霊歌の中でもSorrow song―「悲しみの歌」という分類に入る曲なんですけど、黒人霊歌っていうのはその底流に、奴隷体験という大きな悲しみの川が常に流れていると言えるんじゃないかなと思います。
2014年の番組の再放送です。

塩谷達也
ゴスペルシンガー、ソングライターとして、オリジナルゴスペルを歌い続けると共に、ゴスペルの「紹介者」としても活躍。ゴスペルクワイアの指導、著作活動、メディア出演など、その活動は多岐にわたる。現在、青山学院大学のコンテンポラリー礼拝においてワーシップディレクターを務め、学生賛美リーダーの育成に務めている。FEBCでは番組「Session―アートの中の彼の声」に出演中。
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