炭火が照らし出す再生の物語

交わりのことば―炭火が照らし出す再生の物語 
内村 伸之 (ミラノ賛美教会牧師)お相手・長倉 崇宣
7月22日(土)放送 第2回 ヨハネ21:14〜22

FEBC月刊誌2023年7月記事より

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イエスはシモン・ペテロに言われた。「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たちが愛する以上に、わたしを愛していますか。」ペテロは答えた。「はい、主よ。私があなたを愛していることは、あなたがご存じです。」イエスは彼に言われた。「わたしの子羊を飼いなさい。」(ヨハネ21:15)


 私はここから幼い時の父からの言葉を思い出したんです。退屈だったからか父の車の中でジュースをこぼして叱られることがあって、でもその時父が「一緒に洗車しよう」と言ってくれた。それがとても嬉しかった。ですから、自分の脆さと躓きを知るペテロへのイエス様のこの言葉に、もうなんてことだろうって思います。なぜなら、そう仰るイエス様にもまた十字架の傷があるからです。

—本当に不思議な召命ですよね。

 ところがですよ、このペテロは今度はヨハネのことが気になる。本当にペテロは全然変わらないまま。それでも付いて行くペテロへのイエス様の答えに私自身がものすごく癒やされたんです。

—「あなたに何の関わりがありますか。あなたは、わたしに従いなさい」(22)のところですか?

 はい。実は私も何度イエス様に呟いたことか。他の信仰者や牧師を見て「この人はどうなのか」と。しかし、そんな私に「わたしとお前の愛には何の関わりもない」とイエス様が言い切ってくださるんですよ。そこに変われない自分の病に気づかされ、そんな者を癒し解放するイエス様の宣言に聞こえたんです。

—それが「わたしを愛するか」という言葉に結実していくのですね。

 そうですね。十字架の傷を残した姿で復活させられボロボロのイエス様の御姿は、弟子たちのメシア像と圧倒的に違ったはずです。「そのわたしを愛するか」ですよね。

 私の父は神を信じないと公言していたのですが、その父と一緒に聖書を読んだことがありました。その時、罪がわからないという父に教えてやろうみたいになってしまい、父から「お前の生き方の方が罪深い」と言われ、大喧嘩したんです。その父が亡くなる前、病室で二人だけの時に、私の顔を見て、言葉を振り絞ってこう言ってくれました。「本当は謝りたかった。お母さんにもお前にも。そして神様にも。俺は宗教は好きじゃないけど、あの愛のことと十字架のことは信じる。神は宗教じゃなくて、愛のことなんだろう。」それが最後の会話になりました。父はきっとイエス様からたった一つだけ問われたんだと思うんです。それは「あなたはわたしを愛するか。あなたの罪のために十字架を忍んだわたしを」と。

 (文責・月刊誌編集部)

 


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